なぜ「金メダルをとってなんになる」なんてことが言えるのか 10月のある夜、テレビを観ていると元プロ野球選手で国会議員の江本孟氏が[シドニーオリンピック野球種目]についての議論の中で「プロの選手がオリンピックでメダルを取っていったい何になるの」「アマチュア側が都合のいいときだけ、プロの選手の力を借りようなんて虫が良すぎるよ」と行った内容の発言をし、「親分」と呼ばれる元日ハム監督の大沢氏も大筋で同意の様子でした。 あの人たちは本気でそんなことを考えているのでしょうか。(番組を盛り上げるための発言だったと信じたいです。)私は野球の世界には詳しくありませんが、野球をすること自体は大好きで小学生の頃は、友達と近所の公園で日が暮れるまで没頭しました。野球は楽しいスポーツです。言うまでもなく日本NO.1の人気スポーツであり、長い歴史もあります。そんな野球のトップを極めた人たちが「金メダルをとってなんになる(お金にならないじゃないか)」と発言したことに愕然としました。また「プロとアマとは全く別世界であり、違う種類のもの」という見解も理解に苦しみます。 まず「お金にならないからスポーツをしない、しても意味がない」という考え方は「スポーツ」の世界には存在しえないものです。何かの手段として(お金儲けの手段として)スポーツをすることは厳密にはスポーツと呼べません。「最近おなかに脂肪がついちゃったからジョギングでもしようかしら」はスポーツではありません。ダイエットです。お金を稼ぎたいのであればプロ野球選手でなく、そのほかの職業でもいいはずです。子どもたちがプロ野球選手になりたい、Jリーガーになりたいと思うのはなぜでしょうか。プレーをしている姿に憧れるからです。ベンツに乗っている姿に憧れるからではありません。 「スポーツ」とは簡単に言えば「あそび」です。日常生活から離れた非日常的な活動を楽しむものです。オリンピックはその最たるものです。オリンピックという世界規模のお祭りを世界中のみんなで非日常的に楽しもう、ということであれだけ全世界が熱中するのだと思います。 「オリンピックで金メダルをとってなんになる」、確かになんにもなりませんが、何にもならなくとも好きだから、楽しいから、極めたいからやるのが「スポーツ」です。あそびは何かの為の手段ではないのです。 どうも日本では「プロスポーツ」という言葉がはっきりと認識されていないようです。「プロスポーツ」=「職業スポーツ」ではないと思います。そういう側面もありますが実際には「トップレベルのスポーツ」と考えた方が現実に合うはずです。野球界は過去プロ野球のことを職業野球と呼んでいた歴史がありますが、このあたりから誤解が生じているようです。同じ野球というスポーツながらアマだプロだと別々に分けて対立するのもそれに起因しているように見えます。江本さんや大沢さん、そのほか大勢のプロ野球選手は子供の時、高校生の時、大学や社会人の時どういった組織のもとに野球を楽しんできたのでしょうか。あまたの「アマチュア」と呼ばれる組織ではなかったのでしょうか。なぜそれらを全く別々のものと考えるのでしょう。このあたりの所は私が以前から疑問に感じていたところですので、日本の野球界に詳しい方は是非お教え下さい。 西武の松坂投手が道路交通法違反で謹慎処分を受けました。各マスコミでは識者の意見として「子どもたちの夢を壊した」などと報道されています。私個人としては松坂投手に落胆も同情もありませんが、一有名選手の交通法違反が子供の夢を壊すなら「金メダルなんて」という発言はスポーツそのものを否定するものだといえます。そうした考えが野球界にあることを問題としてほしいと思います。 日本のプロ野球は長島監督を中心に大いに盛り上がっています。長島監督があれだけの人気を誇るのはなぜでしょう。私は長嶋さんが野球の楽しさを一番シンプルに表現し得た人だからだと思います。「野球ってほんとおもしろいですよ」そんな姿を皆なが愛しているのではないでしょうか。こうした現実を考えて皆さんにスポーツを認識してもらえたら素晴らしいと思います。
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